一橋祭講演企画『幻想伝承』(講師:ZUN)レポート

このレポートについて

去る11月3日に一橋大学の学園祭で行われた特別講演「幻想伝承」のレポートです。
かなりマジメにまとめているつもりです。後半はビールを片手に「ビールは文化です」などとかなり笑わせてくれましたが、その辺は大体カット(予定)です。話が大分右往左往しているのでまとめてみる側としてはちょっと大変ですが(録音・撮影禁止だしねぇ)、頑張ります。どうせ僕より上手くまとめている人はいくらでもいそうですが。
あ、当然記憶違いもありうるのでくれぐれも鵜呑みにしないでくださいね。責任取れないんで。つーかZUNさんの言っていることと、自分が勝手に噛み砕いて表現を変えた部分が混在してて読みづらくなってしまった(一応そのあたりは気をつけて補注を入れてます)
一応第1部、第2部で分けましたがあまり意味のないものになっているかもしれません。

大テーマ「創作の伝承」

ひとつの作品がシリーズ化していく理由と、今や当たり前に行われているメディアミックスを行う時に気をつけなければいけないことなどをお話ししていただく(予定だったらしい)。

第1部「東方Projectとシリーズ」

最新作「東方風神録」について
  • 開発の経緯

前作「東方花映塚」から1年間ほど休憩をおいてから開発をはじめた作品で、本当は花映塚開発終了の時点でいったん東方Projectを休止する予定だった。(それが風神録を開発するにいたった経緯がよく分からない(メモしてない……)。

  • 「信仰」という作品テーマについて

神社なんだからこのテーマはある意味当然。諏訪神社というほどよくマイナーな神社が地元にあり、資料が多く現存しているので、そこにさらに独自の解釈を加えてストーリーを構築していった。
(ここからはQ&Aや第2部で出ていた内容です(多分))

  • スペルカードプラクティスがなくなった理由

スペルカードプラクティスは存在しないと不便、だからこそ一掃して作り直した(風神録のテーマとして、紅魔郷花映塚とは一線を画した原点回帰ということが挙げられる)。今後のシリーズにこのモードが出てくるかどうかはまだ分からない。ただ、東方Projectでこの機能は当たり前のものではないということを認識してもらいたかった。(後半の部分と関連)

「東方はシリーズではない」という発言について

「シリーズ」と称してダメになっている作品が大量にあり、イメージが悪いので、東方Projectを「シリーズ」とされることを避けたかった。要するに「シリーズ」扱いしても問題ない(ってことだと思う)。
一般的なシリーズ作品のようにIIやIIIなどと称する必要性もそもそもなく、単にゲーム作品である「紅魔郷」「妖々夢」だけでなく、音楽作品そのものも東方Projectの一部である(筆者注:ブックレットの内容以前のレベルでの話だと思う)。一連の東方Projectは、「世界観の伝承」であって、その世界観(ハード)の上に載るシステム・キャラ・ゲーム性(ソフト)は東方Projectという世界観を破壊しないかぎりおそらく何でも良い(この辺筆者が勝手に言い換えています)。だから、STG以外のシステムを採用したとしても、東方Project以外のシリーズを作る理由がない。そもそもSTGがすきで作っているし、1つのSTGを作るのに1年はかかるので新しい媒体で出そうとは思わない。
本当のシリーズ化というのは同じ世界観をベースに展開していくものである。何の説明もなしに巫女さんが飛んでいても許されるのだ。

東方Projectにおける各種メディアミックス、あるいはアニメ化について

さきほどソフトは東方Projectという世界観を破壊しないかぎり何でも良いという言い方をとりましたが、メディアミックスをする上で念頭におかないといけないことは「それぞれの媒体を生かした話の作り方を考えること」なんだそうです。つまり、東方のコミカライズひとつとっても「単なるゲーム版東方Projectのコミカライズ」ではなく、漫画という表現手法が十分に生かされるような原作を考えないといけない。アニメ化のオファーも来ているが、「アニメ」という手法を生かした物語を作れるだけの時間がないので、受けることはできない。
コミカライズなどのメディアミックスはZUN本人からの申し出ではなく、出版社の方から申し出があって「面白そうだ」と思ったときにだけやっている。そして大体後悔する(原作を考えるのは大変)。ちなみに、こういったときにゲームを原作としてクレジットしないようにしている(クレジットしてしまうと、版権の問題から自分でゲームをいじれなくなるため)。

同人と商業

ZUNは割と厳密にこの2つを分けて考えた方が良いと思っているようだ。ZUNいわく、同人と商業は別物であるはずで、同じならば別れて存在している意味はない。同人業界が大きくなりすぎて商業と入り混じりすぎてしまうと、同人業界にとってロクなことにならない。プロを本気で目指す人間が同人から入るのはひょっとしたら遠回りかもしれなくて、最初からプロを目指して行動をするほうが良いのではないか。
ところで、今の商業ゲーム業界はかなりガチガチに固形化しているらしい。たとえばFFはシリーズとは言いがたく(作品ごとに世界観が全く異なる)、商業におけるシリーズとは「企画を上司に通させるための道具」となっている。その点DQはちゃんとDQしており、スクエニDQをシリーズとして発展させていくつもりなのではないか。
本当の意味で「新しいもの」が台頭してくる例はあまりない。オリジナルタイトルが出ても、消費者がそれを買うかどうかの判断基準としてスタッフの名前がある(売るほうもそれを見越してプッシュしてくる)ため、結局はFFのようなシリーズものを売るのと同じ手法であるが、これも商業なら仕方のないことで、消費者側からしても新しいものには手が出しにくい。
その点同人ならば、新しいものを作ることができ、口コミで広まりやすい。そのため、敢えてシリーズに執着することなく開発ができる。

第2部:ゲーム製作とシリーズ

開発者にとってのシリーズ化のメリット(一般論)
  • 製作コストの減少

0から新たな世界観を毎回毎回構築するのは非常に労力がかかる。シリーズ化を行うことで世界観をそのまま活用することが可能であるから、シリーズが進むごとに作品を深化させることができる。また、ユーザーに1つの作品で世界観の全てを見せる必要もなく、世界観の一部を少しずつ見せていくことでシリーズの構築が可能となる。

  • シリーズは完結を目指すべきか?

そして逆説的に、いったんシリーズ化を行うとそのシリーズを完結させることが難しくなるし、またその必要もない。一作品ごとのストーリーは完結させたほうが良いが、シリーズの完結を行わないことで、未来の可能性を残すことができる。「東方は明示的に(ストーリー的に)「シリーズ完結」として終わらせることはない」そうです。

同じような作品を作り続けることでみえてきたこと(東方)
  • 疲れる(やっぱり大変のようです)
  • 遊ぶ人が変わっていく(ずっと同じ人が遊んでいたら、東方はとっくに一見さんプレイ不可能なゲームになっていたはず)

今の東方のネックは遊んでいる層が広すぎること。どこで帳尻を合わせるかが非常に難しい。(Easyでもとてもクリアできない人、東方なんてLunaticでもヌルいというゲーマーの差をどう埋めるか?)
よく、新参古参で揉め事が起きるけど、「モノを楽しむかどうか」に新参古参は関係ないと思う。これが東方が長続きできるためのヒントになるかもしれない。

ゲームの面白さはどこにあるのか?(一般論)

ゲームの面白さは「難易度」にある。もしゲームシステムがクソでも難易度設定が絶妙ならば面白いと感じるだろう(しかし、ゲームシステムそれ自体が難易度を決定するひとつの要因となってしまうがゆえに、そのさじ加減は難しい)
この難易度のさじ加減の難しさの要素として、「一度便利なシステムを導入すると後戻りが出来ない」ということがある。例えば最近のゲームでは取扱説明書を読まなくても町のキャラクターが電波を受信していきなり操作方法の説明をはじめる。一度このようなシステムに慣れてしまうと、このチュートリアルが存在しないゲームを遊んだ時に大きなストレスを感じる。そのため「便利なもの」を導入する前にそれが良いのか悪いのかをよく吟味する必要がある。

創作のオリジナリティについて

「本当に新しいもの」を作れる人間は本当に稀にしかいない。ほとんどの創作物は既存の要素を結びつけたものである。そういう意味だと、ニコニコ動画は「創作の原点」ともいえる。今はMADが中心だが、これからのニコニコ動画は完全なオリジナル作品(≠本当に新しいもの)が増えていくのではないだろうか。「アニメ・楽曲をそのままアップロード」という行為には、全く創作性はないと思う。

ゲーム創作について言いたいこと

Q&Aの最後の部分での発言+他の部分での発言をまとめて。

  • ゲーム開発者や、開発をしたいと考えている人

あまりゲームを作る前から手順を考えすぎないこと。「〜の作り方」と言った本の内容を鵜呑みにしすぎない。とりあえず作ってみて、足りないところが分かったら努力してそれを身につけるようにする(筆者コメント:確かにその通りだと思う。必要性を感じずに学んでいると血や肉にならないんですよね。)

ありがとう。

  • 二次創作を行っている人へ

二次創作の商業化については、二次創作を行っている人自身の裁量に任せています。二次創作単体の問題として扱い、ZUN本人の東方Projectとは無関係だということです。しかし、商業と関わると自分でその作品を自由に扱えなくなる(例:カラオケ配信を行っている曲を自分のページで公開することはできなくなる)ので、そのあたりのルール作りは重要である。

あとがき

やはりあの内容をまとめるのには僕の能力があまりにも不足していました。
結論もとくに見えない内容となってしまいましたが、とても興味深い考え方へのカギがいくつも含まれていると思います。もう少しテーマを絞ってレポートをあげてみたいですね。
まぁ、掲載までの速さを重視したレポートということでご覧いただければと思います。

追記

一橋大学の 幻想伝承 レポートまとめに他の方がうpしたのが載ってます。よくまとまってて頭が下がります。